東北関東大震災から10日以上経ち、被災地は依然として不安定な状況が続いている。地震、津波、そして原発の事故と、何重にも苦難が押し寄せ、人々を苦しめている。

 そうした状況で、海外に住む日本人が立ち上がり、今出来る事を、と募金活動の動きが活発になって来ている。故郷を思う気持ち、そして、大変な状況の日本をテレビを通してみるだけの苛立ち、そんな思いが人々を駆り立てている。
 もともと、スイスではそうしたボランティア活動や飢餓に苦しむ人たちのための活動が活発で、テレビで義援金を募ると短時間でものすごい額のお金が集まる。自分たちが非常に恵まれた環境で暮らしているという自覚があり、苦しんでいる人に手を差し伸べるという意識が、企業はもちろん一般の人たちにおいても非常に高い。
 もちろんスイスだけではなく、日本国内でも著名人の寄付や呼びかけに応じて、たくさんの義援金が集まっていて、被災した人たちのための復興に役立つ事と思う。

 一方、関東のエネルギー供給を担う、福島原発の事故の影響で、関東圏では3時間毎の節電を余儀なくされている。電車も本数が減り、大きな企業の施設も全ては稼働出来ない。病院などでは自家発電もあり、ある程度しのぐ事は出来るが、それもこの先ずっとというわけにはいかない。
 医療従事者にとっては、急を要する患者の手術や治療に大きな影響が出て来る。また、人工呼吸器など、電気が無くて止まってしまうと生死に関わる深刻なケースもあり、早期の電力供給を望んでいる人はたくさんいるわけだ。
 他にも、小さな工場の生産ラインが3時間毎に止まってしまい、行程をまた1からやり直すという事も起きていて、経済的な損失も大きなものになる。

 それなのに、プロ野球セリーグは、東京ドームでナイター開幕戦を行なおうとした。さすがに政府が節電を要請し、東京電力の管轄内では、ナイター自粛の方向だが、日程をずらしたといっても、たったの4日。
球団側は「経済活動を停止したら日本社会は沈没する」といっているが、前述したように、皆節電を強いられて、不便な生活を送っているのに、あんな大きな施設を稼働させたら、どれだけ電力が必要なのか考えていないのか。経済損失というのは、「球団の経済損失」という解釈しか出来ない。「勇気や希望を与える」という発言も、被災地で誰がのんきに野球など観戦出来るのか?下手をすれば、ドームを稼働させたのが原因で、予定してなかった地域で停電が起き、医療機器が止まって、死に至るケースだって無いとは断言出来ない。それでも、開幕戦をドームでやるというのか?

 この先、被災した人たちが生活を取り戻す準備が出来る状態になってから、野球で勇気や希望を与えれば良い。今は誰が見てもそんな時期ではない。
 これに対しては、選手達も理解出来ないようで、パリーグに開幕を合わせるなどの要請を出し、球団側と対立する形になっている。

 野球の開幕日は政府が決めるものではないが、このような非常事態に、大量の電力を無駄に使う権利も球団には無いはずだ。電気の寸断された被災地に行って現状を見て来てほしいものだ。それでも、こうした人達は考えが変わらないかもしれないが。