今回の東北関東大震災で亡くなられた方々には、心よりご冥福をお祈りするとともに、1日も早い復興、そして、安全な生活を祈念致します。

3月11日の朝、いつも通りニュースを確認して、東北地方で地震があったのを知った。たぶん、それほど被害は大きくないだろうと思っていたが、数時間後その予想を遥かに上回っていた。スイスに住む知人や身内から電話が鳴り、日本の家族は大丈夫かと聞かれて、甚大な被害が出ている事をネットやスイスのメディアなどで改めて確認した。

 家族がいるのは中部地方と関東地方。すぐに電話をしてみるが、どちらも繋がらず、混線か通話規制をされているようだった。しかし、メールは繋がり、携帯電話のメールから大丈夫との知らせが入り安心したが、どんな状況かは分からずだった。それでも、Skypeが繋がり、状況を確認する事が出来た。関東地方でもかなり揺れ、外のグランドに待機したが、立っていられないくらいの揺れだったそうだ。それを聞いて、震源地の東北地方の衝撃はどれほどだったかと思うと言葉が出ない。

 午後になり、近所に住む牧師さんの奥さんが訪ねて来て、地元のテレビ局が日本人にインタビューしたいそうなので出てくれないかという事だった。この牧師さん夫妻は、日本に20年暮らした経験があり、日本語も堪能なスイス人だ。そのため、日本への思い入れは他のスイス人とは違う。

 間もなくテレビの取材班が来るというので、少し準備をしてその方の家にお邪魔した。その時点では大震災が起きた午後なので、原発の事故はまだ把握していなかったし、津波の映像もまだ見ていなかったと思う。
 インタビューでは、家族は大丈夫かとか、大震災のニュースを聞いてどんな思いだったかという程度の質問だったが、ことのほか、スイス人は地震のニュースに敏感である事は以前から知っていた。日本で震度3くらいの地震でも報道され、身内から電話が鳴る。スイスでも地震がない訳ではないが、体に感じる揺れはまれであるし、7年以上住んでいるがまだ一度も無い。

 その後、原発の事故も報道され、欧州のメディアは一気に過熱し、ドイツでは原発反対の運動が各地で起こった。スイスでも原発を見直す議論が出始め、世論調査では87%が原発廃止という結果が出た。その辺りから、報道も原発の状況に焦点が当てられ、被災した家族や避難状況など、あまり報道されなくなっている。更には、日本に滞在する外国人の国外避難も過熱気味に報道され、フランスにおいてはチャータ便を3機も出した。
 その一方で、日本の報道は落ち着いていて、放射能の心配は無いという対極的な報道だったが、それに気がついたスイスメディアも東京の人々は非常に落ち着いていると特派員が伝えた。

 しかし、その原発では爆発も起きてしまい、冷却が出来ない状態に陥る。テレビでは、放射能は関東に飛散していないと伝える人、非常に危険だという人がいて、情報が錯綜した。どの情報を信じれば良いのか、分からない状態が今も続いている。
 関東にいる知人にメールで確認すると、身内に研究所で働く人がいて、毎日放射性物質の量を教えてもらっているが、その飛散量が報道されているような大丈夫な量ではないと言う。大人と老人はともかく、子供はまずいという。
そもそも、この放射線の値が、マイクロシーベルトやミリシーベルトでほとんどの人が聞き慣れない数値。しかも、どの程度の量なら大丈夫なのかは分からない人が多かったと思う。その後、レントゲンを受けた際の量や、飛行機に乗った際の数値を出し、比較して説明していたが、ここでも視聴者には分かりにくい言い方をしていた。納得出来なかった人は多いと思う。レントゲンは一瞬の事だが、そこで生活するものにとっては、24時間365日だ。単位も毎時と言ったり、年間と言ったり、視聴者が混乱するのは当たり前だ。

 関東にいる兄弟も、やはりメディアを通じて出て来る情報を鵜呑みには出来ないと言っていた。しかし、ガソリンも無く動ける状態ではなく、今は留まるしか無い。被害の少ない地域の人でも、精神的な疲れは確実に出て来ているようだ。