毎年秋にZUGで開催される、アフリカ ザンビアのエイズ孤児院のためのチャリティーバザーに、2年前から参加させて頂いている。今年も無事に終わり3回連続で収益も更新しそうである。

 バザーには、お寿司やお菓子、日本のおまんじゅう、ケーキ、コロッケ、等々、毎年多くの方がボランティアで出店、バザーを支えている。そして、日本語の古本の販売は年々寄付で集まる本も増え、3000冊以上はあるのではないだろうか。
 ここスイスにおいて、日本の書籍を販売している本屋はない。各地域の日本人クラブや日本人学校、コミュニティーなどでは見られる。近年は子供図書館として、貸し出しをされているところもある。
 私もこの本のところで、陳列や片付けを手伝っているが、真っ先に無くなっていくのが子供の教育関連の本。
郵便事情も良いので、日本から送ってもらう人も多いと思うが、やはりスイスで手に入れる事が出来るのはありがたく、お母さん方が、あの膨大な量の本の中から探し出して、買っていかれる。
スイスで暮らしながら、子供に日本語を伝えていきたいという、おそらく誰もが思っている、子供に託す願いがそうさせているのだと思う。

 それは、ここスイスで教育を受けると、まずはドイツ語かフランス語が主言語となり、フランス語、ドイツ語、英語が学校の授業で入って来る。この環境で日本語をキープする事は、なかなか難しい。当然ながら、言語だけではなく、数学や物理、科学など、他の科目もあるので、その中で日本語の存在が薄れていくのは必然だ。

 スイス人と結婚して、スイスに移住して来た日本人にとっては、古い本や過去に読んだ事のある本を見つけると、非常に懐かしい。今ではインターネットで日本語の記事を読む事が出来、情報収集には不便を感じない程になった。が、やはり手に取って活字を読むありがたみは、本にしかないように思う。一時帰国の際、飛行機で日本の新聞を手にした時の感覚と似ている。

 このバザーは、そんな懐かしい気持ちにさせてくれる側面もあり、それでいて、ホームシックになるような事は不思議と無い。皆事情は違うにしても、縁あって日本からスイスに移り住んだ人たちだから、どこかで同じ気持ちを共有しているのかもしれない。

 そもそも、このバザーの主催者であるEさんとは、ある日本の手打ち蕎麦のイベントで席が隣になったのが発端。自分はドイツからスイスに戻ったばかりで、たまたま手打ち蕎麦の主催者と知り合いだった事もあり、出向いたわけだが、一度リセットした日本人社会でのつながりを再構築しようとしていた時だった。

 一人で参加し、知り合いもいなかったので、Eさんに「あなたもこっちに来て一緒にそばを食べなさいよ。」と言って声をかけてもらった時は、素直にうれしかった。そのテーブルには、女性ばかり、スイス在住歴が長い人も、まだ来たばかりの人もいたので、自然ととけ込めた。
自分のやっている事を紹介し、興味を持って頂いたので、何度かメールをやり取りしているうちに、彼女が主催しているバザーに来ないかとお誘いがかかった。

 それがきっかけで、私が運営している日本語情報サイトスイスワンダーネットで、収益金の報告やバザーの告知を行なっている。バザーの写真も掲載するので、自然とサイトを見てくれる人も増えた。
 また、Eさんが住んでいるのは中央スイスで、私はスイスの北の方にあるバーゼル。他の地域とどうやって、繋がりを作るかが課題だったため、Eさんのおかげで、全く異なる地域の人とも知り合う事が出来た。

 今回で7回目のバザー。自身は今年で3度目の参加だったが、年々このバザーに来る人も増えているように思うし、やはりアフリカで苦しむ子供達のためにと、Eさんをはじめ、皆の想いが伝わっていっているのだと感じる。その証拠に、こうしたチャリティーバザーの活動をスイスの別の地域でしていた日本人女性の方も、今年は参加をされた。

 毎年バザーのテーマは違うが、今年は「学校への道」という事で、学校に通えない子供達のために資金を集めている。
スイスで集めたお金が、一切団体を通さずアフリカのザンビアに送金され、現地でその何十倍もの価値で子供達に役立てると思うと、また来年も頑張ろうという清々しい気持ちになる。

 恥ずかしながら、こうした経験を今まで日本でもほとんどした事が無かった自分には、新鮮であり、充実した時間を過ごせる、年に1度の楽しみとなっている。

(バザーの紹介記事は下記リンクから、ご覧頂けます。)
http://www.swisswondernet.com/?cat=50