8月16日(木)、ドイツのフランクフルトで、ブリュッセル在住の堀米ゆず子氏のバイオリンが、乗り換えの際に空港の税関により没収された。
彼女の持っていたバイオリンは、グアルネリ製の17世紀のヨゼフ・グアルネリ・デル・ジェスというバイオリン。
これを税関は骨董品として扱い、その場で調べた結果1Mio. Euro(約1億円)の価値があると判断。ドイツの税金VAT19%を課税し、更に申告を怠ったとしてペナルティーで19%の罰金を科されてしまった。
つまり、Euro 190.000+190.000=380.000Euroを支払わなければ、このバイオリンは彼女の元には戻らない事になる。

しかし、演奏家にとって楽器は骨董品ではないし、商売道具なのは明白。音楽関係者に聞いたところ、「この場合、演奏家が高額な楽器を抱えて演奏に回る際、EU国内ではこうした課税がされませんが、それ以外の国に行く場合は、自分の住む国に戻る事の証明書を携帯し、税関では必ず申告し、課税に関しても購入した際の何かしら証明出来る物を携帯している事が望ましいです。」との事ですが、今回の件は少しややこしいようです。
このバイオリンはおそらく日本のスポンサーが購入したもので、堀米氏はブリュッセル在住。日本から持ち込まれた物(輸入品)として、課税の対象となったと思われます。これが日本在住の人で、また日本に帰ると言う事ならば、話しは少し変わっていたのかもしれないですが。

別の音楽家の方によれば、こういったことはスイスでも当然起きていて、この数年で規制が厳しくなったとの事。確かに、身近なところでも、欧州在住の人が日本に一時帰国をして、新品のパソコンを購入し持って帰った際、税関で止められて税金の支払いを拒否して没収されたケースはよく聞きます。申告しないで通過しようとした場合は、言い逃れはほぼ出来ません。

これは、日本から荷物を送った時も同じ事で、新品でレシートがついていれば、中身をチェックされ、その金額にその国の消費税と税関手数料がかけられます。それを支払った上でやっと受け取れます。受け取り側としては、選択の余地はないです。支払いを拒否した場合は、返送されてしまいます。これも多くのスイス在住の日本人の方が経験している事だと思います。

転売目的だったのならともかく、誰が見ても演奏家の商売道具で、いくら価値があると言っても、音楽家にとって骨董品ではないはず。もう少し柔軟な対応をしてほしいと思うのは、やはり甘いのでしょうか?
クラシック音楽の盛んなドイツだけに、もう少し理解があってもいいのでは?つい、そう思ってしまいます。
弁護士を交えた交渉も出来るとは聞きますので、スポンサーの購入した物であるのなら、なおさらその交渉の余地はあるのではと思います。何とかこのバイオリンが彼女の元に戻る事を願いたいと思います。

(参照記事:独語)
http://www.bild.de/news/inland/zollamt/der-zoll-hat-meine-geige-1mio-euro-wert-beschlagnahmt-25713368.bild.html