スイスに来て、かれこれ14年目に入るが、欧州の中でも教育、生活の質、国民の満足度などが高く、外国人として暮らしながら、満足度は高い。
しかし、サービスという概念は日本人とは随分違うようで、随分前に、これは仕方ないと諦めてさほど気にしなくなってはいる。むしろ、スイス人の対応の仕方を覚えてこちらも客としてうまく順応し、気持ちのいい接客や対応も数々経験している。

それでも1年に1回くらいは、どうにも腹がたつことがある。
とある金融機関のATMで、凍てついた朝、現金を下ろすためにカードを入れるが、全く反応がない。呼び出しを押しても誰も応答しない。ついには画面に、「Technishes Problem」の表示とともに赤のバッテン印が出た。カードを機械に吸い込まれた上、何か自分が悪いことをしたような気にさえなる。

幸い窓口は既に営業を始めていたため、中に入ってスタッフに説明すると、「窓口に並んで待ってください。」という。さすがの丸投げ対応に「え?窓口に並べって言いました??その間にカード出て来たらどうするの?」と言って、眉間にしわを寄せて、並ばずもう一度外に出て行くと、2、3人のスタッフがこちらの態度に気がついて、カウンターの中に急いで入って行きました。

そこまでは良かったが、ちっとも戻ってこない。すると、さっきのうちの1人がまたカウンターから出て来たので、「どのくらい時間かかるんですか?」と聞くと、「そんなことはテクニックの人が来ないとわかりませんよ。」なんで私に聞くの?知らないわよ。という明らかにふてくされた顔。よくそんな態度をとれるなとある意味感心してしまう。
こちらは誰が対応しているかもわからず、ただただ待たされているのに、何の説明もなしで納得するとでも思っているのか?

すると、またそれに気がついたさっきの人が、テクニックスタッフが来るまで15分くらい待ってくれというので、名刺を渡して電話してくれるように言い次の用事へ急いだ。
ここまで謝罪の言葉はなし。それは機械のATMが悪いから、私たちは悪くないので、謝る必要などない!という考え方だ。

結局スイス人は、自分の担当ではないと、全く感知しない癖があり、向こうの問題であるのにもかかわらず、文句を言った客を睨みつけてくる。
ただ、対応してくれた3人のうち中年のおばさんは、イラつく自分にすぐ気がついて、「ATMの問題でカードは大丈夫ですから心配しないでください。」と言って、申し訳なさそうな笑顔で多少なりとも気を使ってくれた。少しは溜飲を下げられたような気がする。

日本のデパートの過剰サービスもはっきり言って、いい気はしないが、スイス人スタッフのこうした態度はどうにもならない。これはスイス人自身が言っていることなので、近い将来AIが発達すれば、こうした作業はAIがやれば済むだろう。嫌な思いもしなくて済むどころか、AIが問題をあっという間に解決してくれるだろう。

そもそもサービスとは何か?を考えるようになったのは、海外生活を経験してから。
スイス人は未だにこの態度だが、どうでもいいと思っているわけではないのはわかる。とある通信会社やデパートなどは、明らかに接客レベルを上げようと意識している会社もある。つまり、気持ちのいい対応が、購入につながることをわかっている会社は、若い社員を中心に教育していて、若干ぎこちないが、今までと接客が違うことはすぐにわかる。
実際に、ある商品を買うのに、完璧なまでに商品説明をしてくれた人がいて、知識の豊富さにも驚き、最後は納得して予算をかなり超えた商品を購入した。でも、それで良かったと思っているし、足が出たが今でもその商品には満足している。販売員としては100点満点ではないだろうか?

これからもスイスの広い意味での「サービス」に期待することはないが、それに対応するスキルを磨いて行くことは、この国で生きて行く上で必要条件だなと再認識した。